<この記事を読んでわかること>
・薬物療法の最新動向と効果的な選択肢
・リハビリテーションの役割と効果的な方法
・再生医療の可能性と治療効果
今回は脳血管障害性パーキンソン症候群の治療法について解説します。脳血管障害性パーキンソン症候群は、脳卒中などの脳血管障害によって起こるパーキンソン病の類似疾患です。治療法として、薬物治療、理学療法、作業療法がメインとなります。その他、深部脳刺激療法や幹細胞治療などの治療があります。
薬物療法の最新動向と効果的な選択肢
この記事では薬物療法の最新動向と効果的な選択肢について解説します。
具体的な薬剤を紹介します。
レボドパは、脳血管障害性パーキンソン症候群に対して使用されることが多い薬ですが、治療効果はパーキンソン病ほど顕著でありません。
特に、進行した病態では反応が限定的であることが多いです。
ドパミン作動薬(プラミペキソールなど)は神経の伝達物質であるドパミンの働きを強める薬ですが、効果が個々の患者によって異なります。
ドパミン補充療法であるL-ドパ薬と併用して使用されることが多々あります。
MAO-B阻害薬(セレギリンなど)は、ドパミンの代謝を抑制し、ドパミン濃度を維持する作用があります。
そのため、パーキンソン病の治療に広く用いられており、脳血管障害性パーキンソン症候群に対しても薬物効果が期待されています。
抗コリン薬(トリヘキシフェニジルなど)は、筋肉のこわばりや振戦を改善する薬です。
しかしながら、高齢者に使用する場合には、副作用として、認知機能への悪影響が懸念されるため、慎重な使用が求められます。
薬物療法は一定の効果があります。
でも、限界があることが多く、補完療法としてリハビリテーションが必要となります。
リハビリテーションの役割と効果的な方法
この記事ではリハビリテーションの役割と効果的な方法について解説します。
リハビリテーションの主な目標は、筋力の維持および向上、バランスの改善、日常生活動作の改善です。
以下に3つを紹介します。
1つ目は、理学療法です。
筋力を維持し、関節の可動域を広げるために、抵抗運動やストレッチが行われます。
特に下肢の筋力強化は歩行能力の改善をもたらすので重要です。
動作の安定性を向上させ、転倒を予防するために、バランスボードやバランスディスクを用いたバランストレーニングも行われます。
歩行パターンの修正や歩幅の改善を目的とし、歩行補助具を使用しながらトレッドミルや地面での歩行訓練を行うこともあります。
次に、作業療法です。
日常生活動作の向上を目的として、着替え、入浴、食事などの基本的な動作を反復練習します。
その際、自宅や職場の環境を調整し、患者が安全に行動できるための検討も必要です。
3つ目は、言語療法です。
話す力を向上させ、コミュニケーション能力を高めるための音声訓練を行います。
これらのリハビリテーションは、患者の生活の質を向上させるために不可欠であり、様々な方法を組み合わせた総合的アプローチが必要です。
再生医療の可能性と治療効果
この記事では再生医療の可能性と治療効果について解説します。
再生医療は、神経細胞の再生を促し、症状を改善する新たな治療として注目されています。
1つ目は、幹細胞治療です。
脳の神経細胞を再生する可能性がある幹細胞を、脳内に移植する方法です。
結果、脳内の神経回路を再生し、後遺症の改善が期待されます。
2つ目は、成長因子を利用した治療です。
成長因子は、細胞の増殖や分化を促進するものです。
例えば、脳由来神経栄養因子(BDNF)や神経成長因子(NGF)は、神経細胞の生存と機能を援助する働きがあるため、後遺症を軽減する可能性があります。
実際、動物実験の幹細胞移植において、脳の神経細胞の数を増加させ、運動機能や認知機能を改善することが報告されました。
でも、いずれの治療も、人に対する効果については十分に検証されていないのが現状です。
脳血管障害性パーキンソン症候群に対する再生医療の実用化には、更なる研究と臨床試験が必要です。
安全性と長期的な効果の検証も必要でしょう。
しかしながら、将来的に有望な治療法であることは間違いありません。
まとめ
今回の記事では、脳血管障害性パーキンソン症候群の治療法について解説しました。
脳血管障害は神経損傷を伴うことが多く、後遺症に苦しむ患者多いのが現状です。
そのため、損傷した神経を蘇させる再生医療は期待が持てます。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「再生医療×同時リハビリ™」があります。
脳血管障害性パーキンソン症候群に後遺症に苦しむ患者に対する期待の持てる治療となります。
よくあるご質問
- 血管性パーキンソン症候群の治療法は?
- パーキンソン症候群薬による薬物治療が中心となります。その他、身体機能回復を目指した理学療法や作業療法、深部脳刺激療法、幹細胞治療などがあります。患者の症状に応じて、組み合わせて行われます。
- パーキンソンとパーキンソン症候群との違いは何ですか?
- パーキンソンは、ドパミンという神経伝達物質を産生する細胞が減少することにより起こる神経変性疾患です。一方、パーキンソン症候群は、主に脳血管障害が原因となりパーキンソン病類似の症状を呈する疾患です。原因の違いが主な相違点です。
<参照元>
厚生労働省 難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/
脳卒中の治療と仕事の両立お役立ちノート|厚生労働省 脳卒中情報サイト:https://www.mhlw.go.jp/content/000750637.pdf
6 パーキンソン病|厚生労働省 脳卒中情報サイト:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089954.pdf
Treatment of Vascular Parkinsonism: A Systematic Review|Brain Sci. 2023, 13, 489: https://doi.org/10.3390/brainsci13030489
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脳梗塞などの脳血管障害の発症を契機にパーキンソン病と同じ様な症状が出現する病態を、脳血管障害性パーキンソン症候群と呼びます。脳血管障害性パーキンソン症候群は通常のパーキンソン病と経過や症状も異なり、予防法や治療法も異なります。そこで、この記事では脳血管障害性パーキンソン症候群について詳しく解説します。
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