・慢性期の後遺症の症状がわかる
・後遺症との向き合い方がわかる
・後遺症を効率的に改善する方法がわかる
脳梗塞発症後、急性期治療を経て病状が安定した後は自宅生活や社会復帰を目的とした慢性期治療に移行します。
慢性期は後遺症と向き合う期間であり、しっかりとリハビリを行うことが重要です。
また、脳梗塞の再発予防に努める期間でもあります。
この記事では、脳梗塞の慢性期にやっておきたいことについて詳しく解説します。
慢性期によくある後遺症の症状は?
脳梗塞は下記の3つの経過に分類されます。
- 急性期:発症後の不安定な状況をケアして救命や治療を行う期間
- 回復期:後遺症軽減や社会復帰を目的としてリハビリを行う期間
- 維持期:自宅生活や社会生活を通して日常生活に復帰する期間
以上のうち、回復期や維持期を合わせて慢性期と呼び、この時期は脳梗塞の再発予防や後遺症対策に努める時期です。
慢性期によくある後遺症としては、麻痺やしびれなどの神経症状はもちろん、嚥下障害や構音障害、脳血管性認知症や脳卒中後うつ病、脳血管性パーキンソン症候群、脳卒中後てんかん、不眠などが挙げられます。
また、麻痺やしびれによって転倒リスクも増加し、リハビリや日常生活の中で転倒し、骨折などの外傷を負ってしまった場合、さらに日常生活動作(ADL)の低下を招くため、十分注意が必要です。
上記の中でも特に注意すべき後遺症は嚥下障害であり、咽頭部や喉頭部の筋肉が麻痺することで、飲み込む能力が低下するため、うまく食事を食道に送り込めなくなり、誤って気管に誤嚥してしまいます。
この結果、咀嚼した内容物が気管→肺に至ると誤嚥性肺炎になる可能性があり、最悪の場合死に至る可能性もあります。
実際に、脳梗塞後の後遺症による死亡原因として最も多い病態です。
そのほか、記憶障害・注意障害・遂行機能障害・失語症・半側空間無視などの高次脳機能障害が出現する可能性もあり、どのような後遺症が残るかでその後の生活にも大きな違いが生じます。
後遺症の症状や程度によって向き合い方や、日常生活の過ごし方も変わってくるため、発症者にとっては非常に重要な要因です。
脳梗塞の後遺症と上手に付き合うために
脳梗塞の後遺症と上手に付き合うためには、病気についてしっかり理解しておくことが重要です。
例えば、脳梗塞によって損傷を受けた脳細胞は基本的に再生しないと考えられていますが、リハビリを積極的に行って失われた機能をある程度維持・改善することは可能です。
また、リハビリ期間は長期にわたるため、リハビリ施設で同じ境遇の友人を作ったり、自宅でも身辺を支えてくれる家族の存在は大変重要と言えるでしょう。
病気に対する理解をしっかり深め、周囲の支えを得ながら、継続的なリハビリに励みましょう。
慢性期における後遺症の改善方法は?
慢性期における後遺症の改善方法は、しっかりリハビリを行うことです。
リハビリはその種類や目的によって大きく3つに分類されます。
- 理学療法:麻痺やしびれに伴う身体機能の低下を補うためのリハビリ
- 作業療法:着衣や入浴など、日常生活への復帰を目的としたリハビリ
- 言語療法:失語症や構音障害に伴うコミュニケーション能力の低下を補うためのリハビリ
脳梗塞の後遺症と付き合っていく上で、ベースとなる筋力や基礎体力は必須であり、理学療法を実施することで、維持向上が目指せます。
また、着衣や入浴など自宅での基本的な動作や、仕事での作業など、生活する上で必要不可欠な動作に対する作業療法も重要です。
前述したように、誤嚥性肺炎は脳梗塞後遺症による死亡の最大の原因となるため、嚥下訓練を含む言語療法は生命予後のためにも非常に重要です。
また、リハビリ以外にも重要なこととして、再発予防のための内服治療が挙げられます。
抗血小板薬や抗凝固薬などの、血液をサラサラにする薬を継続して内服することで、新規の血栓形成を予防し、後遺症のこれ以上の悪化を予防することができます。
医師の指示通りに内服しないと、血液が固まって血栓ができたり、逆に血液がサラサラしすぎて出血するリスクもあるため、しっかり用法用量は守りましょう。
まとめ
今回の記事では、脳梗塞の慢性期にやっておきたいことについて詳しく解説しました。
脳梗塞の慢性期では、主に再発予防と後遺症対策の2つが重要です。
再発予防のためには生活習慣病の進行を抑制し、医師の指示を守って内服薬を摂取しましょう。
後遺症対策のためには、継続的なリハビリが最も重要です。
また脳梗塞の後遺症に対しては、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
これまで、一度損傷した脳細胞は再生しないと考えられていましたが、脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、より効果的なリハビリを行うことができるため、後遺症からの再生を期待できます。
よくあるご質問
脳梗塞の慢性期の降圧目標は?
脳梗塞の慢性期の降圧目標は、130/80mmHg未満です。
以前までは140/90mmHg未満でしたが、持続的な高血圧に伴う動脈硬化が脳梗塞の原因となることから、目標が引き下げられました。
脳梗塞患者が気をつけることは何ですか?
慢性期においては、まず医師の処方している抗凝固薬・抗血小板薬を指示通り内服できるように努めましょう。
飲み方を誤ると、再梗塞や出血リスクが高まることもあり、大変危険です。
<参照元>J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/103/8/103_1805/_pdf
日本神経治療学会:https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_01.pdf
関連記事
脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまうことで手足の麻痺や呂律困難などの後遺症を引き起こしてしまう可能性がある疾患です。再生医療によって、傷ついた脳神経が修復され、後遺症の改善が期待できる可能性があります。今回の記事では、再生医療と脳梗塞後遺症の関係について述べていきます。
外部サイトの関連記事:脳梗塞を起こした方必見!血圧管理の注意点とは?