<この記事を読んでわかること>
脳卒中後に反張膝が出現する理由
反張膝があることで起こる問題点
反張膝を治療するためのリハビリテーション
脳卒中を発症後に出現する片麻痺症状が原因となって見られる特徴的な歩き方の中に反張膝があります。
反張膝は麻痺側に体重が乗った瞬間に膝が伸び切る歩き方で、本来とは違う歩き方になってしまうことで様々な問題が起こります。
この記事では歩く時に膝が反対側に曲がる反張膝について、原因から問題点、リハビリテーションについて解説します。
脳卒中後の歩行で出現する反張膝とは?

脳卒中を発症した後には、半身の手足が動かしにくくなる片麻痺が出現することがあります。
片麻痺は手足が動かせなくなってしまうため、脳卒中の特徴的な歩き方の原因になります。
特に体重を乗せた時に膝が伸び切ってしまう反張膝はよく見られる歩き方です。
反張膝があると歩く際の速度の低下や疲れやすさが見られ、長期間続けることで関節へのダメージなどの問題が現れることがあります。
反張膝の具体的な状態
歩く時に踵が地面についた後、急激に膝が伸びきるような歩き方を反張膝といいます。
反張膝は別の言い方でバックニーやExtension thrust patternとも呼ばれます。(足関節背屈制限と歩行速度の変化が歩行時の下肢関節角度と筋活動に与える影響|J-stage)
本来であれば歩く際は踵が地面についた後は少しだけ膝が曲がり、脚が後ろに行くにつれて膝が伸びた後、脚を前に出す際に再び曲がります。
しかし、反張膝になると健康な状態と同じような滑らかな膝の動きを行うことが難しくなるため、様々な問題が出現します。
脳卒中後に反張膝が出現する理由
脳卒中を発症し、片麻痺が症状として出現すると歩行に対して大きな影響を与えます。
代表的な歩行への影響は麻痺側の脚の筋力低下や硬さの変化、感覚障害によって力が上手く使えなくなること、姿勢不良などがあります。((脳卒中者の歩行における反張膝の定量的評価に関する試み|J-stage))
中でも、筋力低下は反張膝の原因になりやすいです。
筋力が低下してしまうと、麻痺側の脚に体重を乗せた際に支えきれず、急激に膝が曲がってしまい転倒するリスクがあります。
そこで、筋力が低下している方は体重が乗る瞬間に膝を伸ばし切り、筋力をあまり使わずに骨を使用して身体を支えるような歩き方をすることで転倒のリスクを減らそうとします。
他にも筋肉が硬くなる痙縮が出現すると、膝をコントロールすることができなかったり、感覚障害で膝の位置が分からないと膝を伸ばして安定しようとする場合もあります。
反張膝は様々な原因があり、何が原因かを考えて修正する必要があります。
反張膝を続けることで出現する問題点
反張膝は場合によってはふらつきを軽減して歩行を安定させることがありますが、様々な問題を引き起こすこともあります。
特に問題になりやすいのは歩く時の疲れやすさや膝関節へのダメージなどがあります。
歩く時の速度の低下や疲れやすさ
反張膝は脚に体重が乗った瞬間に膝を伸ばし切るため、この際に歩行に対して急激なブレーキをかけてしまうことが問題になります。
人が歩く際は大きな筋力は使わず、重心の位置を上手く調整することによって歩くスピードを維持しています。(正常・異常歩行の運動学|J-stage)
反張膝が起こると体幹が前に倒れて、重心位置が急激に前方に移動します。
この際、前方へのふらつきを止めるために反対側の非麻痺側の脚があまり前に出ず、ブレーキをかけるように力を入れます。
そのため、反張膝が出現している方の歩行は健常者の歩行と比べるとブレーキをかけながら歩いている分、スピードが遅くなります。
また、反張膝があるとスピードを維持するために一歩ごとに筋力を使って脚を振り出す必要があります。
一歩ごとに脚を振り出すと、筋肉を余分に使う分エネルギーを消費し疲れやすくなります。
このように反張膝が出現すると歩行速度は低下し、疲れやすい歩き方になってしまいます。
長い期間続けることで現れる膝へのダメージ
反張膝は短期的に見ると膝関節へのダメージは大きくありません。
しかし、長期的には無理な膝の動きは少しずつ膝関節に負担を与えます。
特に問題になりやすいのは膝関節の変形と膝関節痛です。
無理な運動を何回も繰り返すことで膝関節に問題が起こるため、長期間の反張膝にはリスクが伴います。
反張膝に対するリハビリテーション
反張膝はリハビリテーションを行うことによって改善を目指すことができます。
リハビリテーションでは主に筋トレや歩行などの運動療法や歩く際の動作を修正する装具療法を行います。
運動によって改善する動き
反張膝の原因は筋力低下や痙縮、感覚低下などがあります。
筋力低下に対しては筋力トレーニング、痙縮に対しては筋肉を伸ばすストレッチを行うことで改善を目指します。
他にも実際に歩く練習を行う中で、重心位置をコントロールして膝が急激に伸び切らないようにする練習を行います。
リハビリテーションでは筋肉の機能や動きを改善することで反張膝を修正し、膝関節に無理な負荷がかからない歩き方を目指します。
装具で修正する物理的なコントロール
運動のみでの反張膝の修正が困難な場合は装具を使用します。
反張膝に対しては短下肢装具という装具を使用します。
短下肢装具はプラスチックもしくは金属の支柱がついたものがありますが、痙縮の程度によって種類を選択します。
装具は足首がやや上を向くように設定されているものを使用することで、体重が乗った際の無理な膝の伸びを修正することができます。
装具での治療を希望する場合は、専門の医療機関に相談を行いましょう。
まとめ
この記事では歩く時に膝が反対側に曲がる反張膝について解説しました。
反張膝は脳卒中後に見られやすい歩き方で、体重が乗った瞬間に膝が伸び切ることが特徴です。
筋力の低下や痙縮、感覚の障害が原因となりやすく様々な問題が出現します。
リハビリテーションでは運動療法と装具療法を組み合わせて、反張膝の修正を目指します。
脳卒中で損傷した神経の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄の治る力を高める治療を行っていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。
よくあるご質問
- 市販の「膝用サポーター」で反張膝を抑えることはできますか?
- ドラッグストアなどで売っている布製の柔らかいサポーターでは、体重がかかって膝が後ろに反る強い力を物理的に止めることは困難です。
反張膝をしっかり防ぐには足首からスネまでを支える短下肢装具など、医療用のしっかりとした装具が必要になります。
- 痛み止めの薬や湿布を貼って歩き続ければ治りますか?
- 痛み止めはあくまで炎症の痛みを抑えているだけで、反張膝という歩き方のメカニズムを治すものではありません。
痛みを感じないからといって無理な歩き方を続けると、気づかないうちに関節の変形が進行してしまう危険があります。
(1)足関節背屈制限と歩行速度の変化が歩行時の下肢関節角度と筋活動に与える影響|J-stage
日本基礎理学療法学雑誌 第16巻2号 2012https://www.jstage.jst.go.jp/article/jptf/16/2/16_29/_pdf/-char/ja
(2)脳卒中者の歩行における反張膝の定量的評価に関する試み|J-stage Jornal of Assistive Tecknology in Physical Therapy Vol.1 no.5 p37-43 2005https://www.jstage.jst.go.jp/article/jatpt/5/1/5_37/_pdf/-char/ja
(3)正常・異常歩行の運動学|J-stage Jpn J Rehabil Med 2021;58:121-127https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/58/2/58_58.121/_pdf/-char/ja
関連記事
外部サイトの関連記事:リハビリテーションの種類と目的とは?効果的なリハビリの選び方
