点滴×同時刺激リハビリで神経障害の後遺症を改善へ

脳卒中

 くも膜下出血の早期治療が余命に与える影響

<この記事を読んでわかること>

くも膜下出血の発症率や死亡率の高さとその要因がわかる。
急性期の治療の重要性と後遺症のリスクがわかる。
リハビリテーションが余命や生活の質の向上に与える影響がわかる。


くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂により発症し、高い死亡率を伴う危険な疾患です。
急性期の死亡率や後遺症のリスク、再発防止のためのリハビリの重要性について詳しく解説します。
また、発症リスクを高める生活習慣や家族歴、高血圧などの要因についても触れ、余命を延ばすための具体的な改善ポイントを紹介します。

発症後の生存率:急性期の死亡率と予後

発症後の生存率:急性期の死亡率と予後
くも膜下出血(SAH)は、脳の動脈の一部がこぶのように膨らんだ動脈瘤が破裂することで起こる疾患です。
この病気は突然発症し、しばしば「雷に打たれたような頭痛」と表現される激しい頭痛が特徴です。
発症すると、脳の表面に血液が広がり、脳圧が上昇することで意識障害や麻痺などの重篤な症状を引き起こします。
さらに、出血の影響で脳血管が痙攣し、脳血管攣縮(れんしゅく)が発生することがあり、これが脳梗塞を引き起こす原因となります。
SAHの死亡率は非常に高く、最大限の治療を施した場合でも22%から50%と報告されています(Stienenら、2018)。
これは、脳梗塞や脳出血よりも高い数値であり、SAHがいかに致命的な病気であるかを示しています。
発症直後の急性期には、約10〜15%の患者が医療機関に到着する前に亡くなり、入院後も約25%の患者が1ヶ月以内に命を落とすとされています。
さらに、生存者の約3分の1は重篤な後遺症を残す可能性があるため、社会復帰には長期間のリハビリが必要です。
くも膜下出血のリスク要因として、以下のようなものが挙げられます:

  • 家族歴:家族に脳動脈瘤やSAHの既往がある場合、遺伝的要因によりリスクが高まります。
  • 高血圧:血圧が高い状態が続くことで動脈瘤に負担がかかり、破裂の危険性が増します。
    高血圧はSAHの最大の危険因子の一つとされています。
  • 喫煙:タバコに含まれるニコチンは動脈を収縮させ、動脈瘤の成長を促進します。
    長期間の喫煙は破裂のリスクを2倍以上に高めると報告されています。
  • 多量の飲酒:慢性的な飲酒や短期間の大量飲酒は、血圧を急激に上昇させる要因となり、動脈瘤破裂の引き金になります。
  • 低BMI(低体重):栄養状態が悪いと血管の健康が損なわれ、動脈瘤が形成されやすくなることが指摘されています。
  • エストロゲン欠乏:閉経後の女性ではエストロゲンの分泌が減少し、血管の弾力性が低下します。
    これにより動脈瘤が破裂しやすくなることが知られています。

これらのリスク因子が重なることで、くも膜下出血の発症リスクはさらに高まります。
特に40歳以上の女性や喫煙者は注意が必要です。
リスクを低くするためには、定期的な健康診断で動脈瘤の早期発見を行い、高血圧や喫煙などの生活習慣を改善することが重要です。
また、家族歴がある場合は、MRIやCTによる動脈瘤検査を受けることが推奨されています。
くも膜下出血は予防が難しい疾患ですが、リスク因子を減らし、生活習慣の改善に努めることで発症の可能性を下げることができます。
発症後の迅速な治療と適切なリハビリが、予後の改善に大きく寄与するため、早期対応が重要となります。

年齢や健康状態が余命に与える影響の差

年齢や健康状態が余命に与える影響の差
さて、くも膜下出血後の余命に与える要因には何があるのでしょうか。
Korjaらは、くも膜下出血後に1年生存している患者の長期的な原因別死亡率などを調べています。
Korjaら、2013
研究では、若年者に比べて高齢者はSAHからの回復後も死亡リスクが高いことが示されました。
特に、高血圧や糖尿病、心血管疾患などの基礎疾患を持つ患者は、再発や脳卒中、心疾患による死亡リスクが高まります。
一方で、若年でSAHを発症し、基礎疾患が少ない場合は、その後の余命が比較的長い傾向があります。
また、リハビリテーションや生活習慣の改善が行われた場合、余命の延長が期待されます。
特に運動習慣の導入や禁煙、血圧管理が重要であり、これらの要素が長期的な健康維持に寄与します。
しかし、年齢が高く、すでに動脈硬化などの疾患が進行している場合は、これらの対策の効果が限定的になることもあります。
このように、くも膜下出血の長期予後は年齢や健康状態によって大きく左右されます。
早期発見と適切なリハビリテーションが、予後改善の鍵となることが示唆されています。

治療後のリハビリが余命延長に寄与するポイント

治療後のリハビリが余命延長に寄与するポイント
くも膜下出血(SAH)からの回復後、リハビリテーションは余命の延長や生活の質の向上に重要な役割を果たします。
Korjaら(2013)の研究によると、SAHの1年生存者は一般集団よりも再発や心血管疾患のリスクが高く、これを防ぐためのリハビリが重要視されています。
まず、身体的リハビリは運動機能の回復を促し、脳卒中後の再発リスクを低くする効果が期待できます。
特に血圧の管理や心肺機能の強化が重要です。
リハビリテーションプログラムにおいて、適度な有酸素運動を継続的に行うことが脳の血流を改善し、脳卒中再発を予防する要素となります。
次に、認知機能の回復もリハビリの重要なポイントです。
SAHは記憶力や集中力に影響を与えることがあり、これが生活の質を低下させます。
認知リハビリテーションを通じて脳の可塑性を高め、日常生活での自立度を向上させることが可能です。
これにより、精神的健康の維持が図られ、長期的な健康状態の向上に寄与します。
さらに、生活習慣の改善も重要な役割を担います。
禁煙、適切な食生活、ストレス管理などがリハビリテーションプログラムに組み込まれることで、動脈硬化や高血圧の進行を防ぎ、心疾患や脳卒中の発症リスクを低減できます。
特に減塩や野菜中心の食事が脳血管の健康維持に有効です。

まとめ

くも膜下出血は高い死亡率を伴う疾患で、家族歴や高血圧、喫煙などがリスクを高めます。
発症後はリハビリや生活習慣の改善が重要で、適切な対応が予後や余命の延長に大きく寄与します。
一方で、後遺症が残ってしまった場合でも、再発予防のための治療を行い、またリハビリテーションを続けることでQOLの改善が見込めます。
当院ニューロテック、脳梗塞脊髄損傷クリニックなどでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
リニューロ®では、同時刺激×神経再生医療®、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて狙った脳や脊髄の治る力を高めた上で、神経再生リハビリ®を行うことで神経障害の軽減を目指します。
ご興味のある方は、ぜひ当院までご相談くださいね。

よくあるご質問

くも膜下出血で寝たきりになった場合、余命はどのくらいですか?
くも膜下出血後に寝たきりとなった場合、合併症(肺炎や血栓症)が起こりやすくなり、余命は個人差がありますが数年以内に亡くなるケースが多いです。
早期リハビリが余命延長に役立ちます。

くも膜下出血は生死に関係しますか?
はい。
くも膜下出血は突然発症し、致死率が非常に高い疾患です。
発症直後の急性期には最大で50%が死亡し、適切な治療を受けても約25%が1ヶ月以内に亡くなるとされています。

<参照元>
#1:Stienen MN, Germans M, Burkhardt JK, Neidert MC, Fung C, Bervini D, Zumofen D, Röthlisberger M, Marbacher S, Maduri R, Robert T, Seule MA, Bijlenga P, Schaller K, Fandino J, Smoll NR, Maldaner N, Finkenstädt S, Esposito G, Schatlo B, Keller E, Bozinov O, Regli L; Swiss SOS Study Group. Predictors of In-Hospital Death After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: Analysis of a Nationwide Database (Swiss SOS [Swiss Study on Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage]). Stroke. 2018 Feb;49(2):333-340. doi: 10.1161/STROKEAHA.117.019328. Epub 2018 Jan 15. Erratum in: Stroke. 2018 Mar;49(3):e144. doi: 10.1161/STR.0000000000000169. PMID: 29335333.:https://www.ahajournals.org/

#2:Yamada S, Koizumi A, Iso H, Wada Y, Watanabe Y, Date C, Yamamoto A, Kikuchi S, Inaba Y, Toyoshima H, Kondo T, Tamakoshi A; Japan Collaborative Cohort Study Group. Risk factors for fatal subarachnoid hemorrhage: the Japan Collaborative Cohort Study. Stroke. 2003 Dec;34(12):2781-7. doi: 10.1161/01.STR.0000103857.13812.9A. Epub 2003 Dec 1. PMID: 14657543.:https://www.ahajournals.org/

#3:Korja M, Silventoinen K, Laatikainen T, Jousilahti P, Salomaa V, Kaprio J. Cause-specific mortality of 1-year survivors of subarachnoid hemorrhage. Neurology. 2013 Jan 29;80(5):481-6. doi: 10.1212/WNL.0b013e31827f0fb5. Epub 2013 Jan 9. PMID: 23303843; PMCID: PMC3590048.:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3590048/

関連記事

あわせて読みたい記事:くも膜下出血の前兆について

外部サイトの関連記事:くも膜下出血による突然死について

治療後の症例のご案内




    脳卒中・脊髄損傷のご相談
    3ステップで簡単フォーム

    • お名前

    • Email・TEL

    • 年齢・内容

    お名前をご記入ください


    • お名前

    • Email・TEL

    • 年齢・内容

    メールアドレス

    電話番号

    ※携帯電話へショートメッセージでご連絡させていただく場合がございます。




    • お名前

    • Email・TEL

    • 年齢・内容

    年齢の選択

    地域の選択

    ご相談内容を入力

    送信前にプライバシーポリシー(別タブが開きます)を必ずご確認下さい。

    ※送信後にページが移動します。確認画面はありません。

    公式Instagram

    関連記事

    PAGE TOP
    貴宝院医師