<この記事を読んでわかること>
頸椎脊柱管狭窄症に伴う巧緻運動障害の特徴と原因がわかる。
頸椎脊柱管狭窄症の症状や病態がわかる。
頸椎脊柱管狭窄症の治療法や社会復帰の可能性がわかる。
頸椎脊柱管狭窄症を発症すると、手指がうまく動かせなくなる巧緻運動障害をきたすことがあります。
早期に対策すれば手術を避けられる可能性がありますが、放置すれば手術が必要となり、社会復帰に時間がかかる、もしくは困難になる可能性もあるため、早期対策が重要です。
この記事では、頸椎脊柱管狭窄症の病態や早期改善のための道筋を解説します。
頸椎脊柱管狭窄症を疑う巧緻運動障害とは

「洋服のボタンがうまくかけられない」「以前は使えていた箸がうまく扱えなくなった」
このような症状を自覚されている場合、巧緻運動障害が起きている可能性があります。
巧緻運動障害とは、手の麻痺やしびれが原因で手先をうまく動かすことができず、手指の細かな運動が障害される症状のことです。
脳から発せられた運動の指令は、大脳→中脳→橋→延髄→頸髄→末梢神経の順に伝達され、最終的に末梢神経からの刺激によって筋肉が収縮することで運動が起こります。
これらの伝達経路のいずれかになんらかの異常があると、脳からの運動の指令が筋肉に正しく伝達されず、巧緻運動障害をきたします。
巧緻運動障害の具体例は主に下記の通りです。
- 洋服のボタンをうまくかけられなくなる
- 箸を器用に扱えなくなる
- 財布から小銭をうまく掴めない
- 字がうまく書けない
大脳や中脳などが広範に障害される場合は意識障害や手足の麻痺など、症状が全身に及びます。
一方で、巧緻運動障害が主たる症状の場合、主に頸髄や頸髄から分岐する末梢神経に異常をきたしている可能性が高く、例えば頸椎脊柱管狭窄症がその代表例です。
頸椎脊柱管狭窄症とは、その名の通り頸部の脊柱管(脊髄周囲を囲う靭帯・筋肉・椎間板・骨などで形成された管腔構造)がなんらかの原因で狭窄する病気です。
加齢による骨や椎間板の変形、もしくは腫瘍性病変(がんなどの腫瘍のこと)などによって脊柱管が狭窄し、内部を走行する脊髄が圧迫された結果、下記のような症状をきたします。
- 頸部の痛み
- 腕や手指のしびれや痛み
- 上肢の筋力低下
- 巧緻運動障害
また症状が進行すると下肢のピリピリ感や筋力低下、平衡感覚の消失など、歩行機能にも影響が出ます。
巧緻運動障害を伴う疾患は他にも

巧緻運動障害は大脳→中脳→橋→延髄→頸髄→末梢神経のいずれかが障害された場合に生じるため、その原因は下記のようにさまざまです。
- 脊椎疾患:頸椎脊柱管狭窄症・頸椎滑り症・椎間板ヘルニア・後縦靭帯骨化症
- 脳疾患:パーキンソン病・脳梗塞・脳出血・脳腫瘍
- 末梢神経障害:手根管症候群・肘部管症候群・胸郭出口症候群・ニューロパチー
先述したように脊椎疾患の場合、脊椎近傍を走行する頸髄が圧迫されることで手指の筋肉に正しい運動の指令が伝達されず、巧緻運動障害をきたします。
また脳疾患の場合、さらに上流の大脳や中脳が障害されることで巧緻運動障害をきたす可能性がありますが、この場合は巧緻運動障害以外にも下肢の麻痺や意識障害、頭痛、吐き気などさまざまな症状をきたす可能性が高いです。
最後に、頸椎脊柱管狭窄症などの脊椎疾患と最も見分けにくいのが末梢神経障害です。
手指の運動は主に正中神経・尺骨神経・橈骨神経などの末梢神経によってコントロールされており、これらの神経は全て頸髄から分岐しています。
例えば手根管症候群では手首あたりの手根管が狭窄して正中神経が圧迫され、肘部管症候群は肘あたりの肘部管が狭窄して尺骨神経が圧迫され、巧緻運動障害をきたします。
そのため、巧緻運動障害が生じた場合、正中神経・尺骨神経・橈骨神経などの末梢神経が障害されているのか、その上流の頸髄が障害されているのか、詳しく診察・検査しないと判断がつかないわけです。
以上のことからも、巧緻運動障害をきたした場合、まずは原因がどの部位にあるのか見極めることが重要です。
頸椎脊柱管狭窄症に適切に対処して早期社会復帰を
巧緻運動障害をきたした場合、まずは近隣の神経内科や整形外科を受診しましょう。
詳しい神経診察やCT、MRI検査を実施することで、原因が脳、脊椎、末梢神経のどこにあり、どのような病気なのか診断できます。
頸椎脊柱管狭窄症が原因である場合は、主に下記の3つの治療法があります。
- 保存療法:頸部の安静やネックカラーによる固定
- 薬物療法:手指の痛みやしびれに対する鎮痛薬の投与など
- 手術療法:症状が強い場合や進行性の場合に行う
症状が軽度の場合は保存療法による悪化の予防や、薬物療法による疼痛緩和が主な治療法です。
一方で、巧緻運動障害の程度が重く日常生活に支障をきたしている場合や、明らかに症状が進行性の場合は手術療法で狭窄の原因を直接的に除去する必要があります。
手術の術式は主に下記の2つが挙げられます。
- 除圧術:頸髄を圧迫している骨や椎間板を切除する術式
- 固定術:金属具を使用して変形した頸椎を固定する術式
どちらかの術式、もしくは両方を行うことが一般的であり、基本的には1〜2週間程度の入院期間で後遺症リスクを軽減しながら症状が改善する場合があります。
また、デスクワークなら術後1〜2ヶ月、身体的負荷の大きい労働でも術後3ヶ月〜半年が社会復帰の目安です。
一方で、症状が悪化しているにも関わらず放置したり、手術までにすでに神経症状が重篤化している場合は手術しても後遺症が残ってしまう可能性があるため、早期診断・早期治療が肝要です。
まとめ
この記事では指先が思うように動かなくなる巧緻運動障害をきたす頸椎脊柱管狭窄症について詳しく解説しました。
巧緻運動障害はさまざまな神経疾患で生じる症状であり、日常生活や仕事に与える影響は少なくありません。
この記事でも紹介したように、早期に原因を突き止め、適切に対処することができれば、後遺症をほとんど残さずに社会復帰することも可能です。
一方で、発見が遅れたり放置してしまうと後遺症が残ってしまい、リハビリテーション以外に対策も乏しいため、早期に対応することが重要です。
さらに近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして注目されている「ニューロテック®」という考え方があります。
これは、脊髄損傷や末梢神経障害に対して「狙った脳・脊髄の治る力を高める」再生医療「リニューロ®」を軸とするアプローチで、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせた治療法です。
頸椎脊柱管狭窄症による神経障害に対しても、今後このような先進的な治療法が希望となる可能性があります。
回復への選択肢を広げるためにも、医療機関と連携しながら一人ひとりに合った支援を継続することが大切です。
よくあるご質問
- 頸椎脊柱管狭窄症でやってはいけないことは?
- 頸椎脊柱管狭窄症を発症した場合、頸部に負担のかかるような運動や姿勢は控えるべきです。
具体的には、激しい前屈や後屈、過度に重いものを持ち上げる、長時間のデスクワークなどが挙げられます。
- 頸椎脊柱管狭窄症の症状は手術しなくても治りますか?
- 頸椎脊柱管狭窄症の症状が軽度〜中等度であれば、薬剤療法や安静、リハビリなどによって十分改善が目指せます。
しかし、放置して症状が進行した場合は手術療法が必要となるため、注意が必要です。
(1)手足の運動障害・麻痺|日本脊椎脊髄病学会
https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/common/sick/s_mahi.pdf
(2)頸部脊柱管狭窄症|MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/08-%E9%AA%A8-%E9%96%A2%E7%AF%80-%E7%AD%8B%E8%82%89%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%85%B0%E7%97%9B%E3%81%A8%E9%A6%96%E3%81%AE%E7%97%9B%E3%81%BF/%E9%A0%B8%E9%83%A8%E8%84%8A%E6%9F%B1%E7%AE%A1%E7%8B%AD%E7%AA%84%E7%97%87
(3)整形外科術後患者の疾患別における復職実態調査|日本職業・災害医学会会誌
http://www.jsomt.jp/journal/pdf/071040131.pdf
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脊髄出血は、血管異常や外傷などにより発生し急激な麻痺や感覚障害を引き起こします。診断にはMRIやCTが用いられ、適切な治療が必要です。後遺症として運動機能障害や神経因性疼痛、自律神経の異常が残ることもあります。早期発見と治療、継続的なリハビリが回復の鍵となります。脊髄出血の原因や症状、診断方法について詳しく解説します。
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