・多系統萎縮症とは?その種類と特徴
・症状が進行する段階:初期から末期までの変化
・余命に影響を与える要因と患者ごとの違い
多系統萎縮症は、進行性に神経が変性する疾患であり、主に中枢神経と自律神経が障害されます。
現時点では、有効な治療法は無く、症状に応じた対症療法が中心となります。
最終的には、運動機能が完全に失われ、呼吸不全や心停止により死に至ります。
平均余命は診断後5〜9年であり難治性で予後が悪い疾患です。
多系統萎縮症とは?その種類と特徴
この記事では多系統萎縮症とは?その種類と特徴について解説します。
多系統萎縮症とは、小脳や自律神経など複数の神経系に障害を起こす進行性の神経変性疾患です。
以前は別の疾患として考えられていた、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、シャイ・ドレーガー症候群が包含され、多系統萎縮症に統一されました。
多系統萎縮症は、大きく2つの病型に分けられます。
一つは、小脳の機能障害が主な症状となるMSA-C(小脳型)です。
このタイプは、ふらつきや協調運動の障害が最初に現れ、歩行困難、姿勢不安定、眼球運動障害などの症状が現れます。
もう一つは、MSA-P(パーキンソン型)です。
このタイプでは、筋強剛、動作緩慢、姿勢不安定など、パーキンソン病と似た症状が現れます。
両病型の共通な特徴として、自律神経系の障害が起こります。
具体的な症状として、起立性低血圧、尿閉、便秘、発汗異常などがあります。
多系統萎縮症の原因は不明ですが、脳内の特定部位の神経細胞に変性が起こり、異常なタンパク質が蓄積することが原因の一つと考えられています。
現在、この病気に対する根本的な治療法は無く、対症療法が中心となります。
症状が進行する段階:初期から末期までの変化
この記事では症状が進行する段階:初期から末期までの変化について解説します。
多系統萎縮症は、進行性の神経疾患なので、初期から末期にかけて徐々に症状は悪化し、重症化します。
初期症状は主に3つです。
- 1つ目は、ふらつき、歩行困難、手足の協調運動の障害、言語障害などの小脳性失調。
- 2つ目は、動作が遅くなったり、筋肉がこわばったり、姿勢が不安定になったりするパーキンソニズム。
- 3つ目は、起立性低血圧や排尿障害などの自律神経障害です。
中期になると、初期症状に加えて、起立性低血圧や排尿障害などの自律神経症状が顕著となり、歩行障害や言語障害も進行します。
末期になると、症状はさらに悪化し、日常生活のほとんどの場面で介助が必要となります。
歩行困難になり、車椅子での移動が必要になります。
嚥下障害が進むため、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
また、呼吸障害が重症化し、人工呼吸器が必要になることもあります。
多系統萎縮症は進行性で致死的な疾患であるため、症状の進行に応じた適切な治療と緩和ケアが必要となります。
余命に影響を与える要因と患者ごとの違い
この記事では余命に影響を与える要因と患者ごとの違いについて解説します。
余命は、患者さんごとに大きく異なり、明確な予測は難しいのが現状です。
以下の4つが余命に影響を与える要因です。
- 一つ目は、発症年齢です。
若年で発症すると、進行が速い傾向にありますが、高齢者発症の場合は比較的緩やかです。 - 二つ目は、症状の重症度です。
初期段階で症状がより重症の場合や、進行速度が早いほど、余命は短くなる傾向があります。
特に、呼吸困難や嚥下困難などの生命に関係する症状が早期に現れた場合は要注意です。 - 三つめは、病型です。
MSA-C(小脳型)は、比較的早く進行する傾向がある一方で、MSA-P(パーキンソン型)は進行が緩やかと報告されています。 - 四つ目は、患者さんの合併症や基礎疾患の有無です。
例えば、心不全、誤嚥性肺炎、尿路感染症などの合併症は、余命を悪化させる要因となります。
基礎疾患として、糖尿病を持つ患者さんは、合併症のリスクが高くなるため、結果として、余命が短くなる可能性があります。
しかしながら、適切な治療、生活習慣の見直し、家族を含む周囲の人のサポートなどは、患者さんのQOLを向上させるので、余命を長くできる可能性があります。
まとめ
今回の記事では、多系統萎縮症とは?病気の進行と余命について解説しました。
多系統萎縮症の平均余命は診断後5〜9年と予後が悪い難治性疾患です。
病態として、神経細胞の壊死や損傷が進行性に起きる神経疾患です。
これを食い止める根本的な治療は現時点ではありません。
そのため、新たな治療法として、再生医療に期待が持てます。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」があります。
これらの治療法は、多系統萎縮症の後遺症に苦しむ患者さんに対して期待が持てる治療となるでしょう。
よくあるご質問
- 多系統萎縮症の余命は?
- 個々の病状や重症度が異なるため、余命を一律に示すことは難しいです。
でも、一般的に、寝たきりになると合併症が増加するため余命は短くなることが多いです。
しかしながら、総合的な医療ケアと適切なサポートにより患者の生存期間や生活の質を向上させることは可能です。 - 多系統萎縮症は進行するとどうなる?
- 病気の進行が速いことが特徴で、身体機能低下とともにさまざまな合併症が起こります。
最終段階になると、自律神経機能低下とともに運動機能が完全に失われます。
そのため、呼吸困難などの重篤な合併症が起こり、多くの場合、呼吸不全や心停止により死に至ります。
<参照元>
脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018:https://www.neurology-jp.org/guidelinem/sd_mst/sd_mst_2018.pdf
難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/221
MSDマニュアル:https://www.msdmanuals.com/
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