<この記事を読んでわかること>
一過性脳虚血発作(TIA)と脳卒中の違いと注意点
熱中症や低血糖との症状の類似性と識別方法
めまいやふらつきを伴う他の疾患との鑑別ポイント
脳卒中と似た症状を示す疾患としては、てんかん、片頭痛、低血糖、心因性の機能性神経症状などがあります。
誤診を防ぐためには、発症状況の細かな聴取と神経学的所見の精査が不可欠です。
特に、突然の発症か否か、左右差の有無、意識障害の経過などが重要です。
さらに、診断を確定するために、CTやMRIによる画像診断を迅速に行うことも重要です。
一過性脳虚血発作(TIA)と脳卒中の違いと注意点
この記事では、一過性脳虚血発作(TIA)と脳卒中の違いと注意点について解説します。
一過性脳虚血発作(TIA)と脳卒中はいずれも脳への血流が一時的に遮断されることで発症しますが、最大の違いは症状の持続時間と脳組織への影響です。
TIAは脳卒中と同様に、突然の片麻痺、言語障害、視野障害などの症状を認めますが、これらの症状は、通常24時間以内、多くは数分から数十分で消失します。
MRIやCTなどの画像検査でも脳組織の損傷は認めないのが特徴です。
一方、脳卒中は血流が持続的に脳への血流が途絶えたことにより、脳細胞が不可逆的に障害を受け、画像上でも明らかな梗塞や出血が確認され、後遺症を残すことが多くなります。
注意すべき点は、TIAが脳卒中の前触れであることが、たびたびあります。
TIAの発症は今後の脳梗塞のリスクが著しく高まっているサインと考えるとよいでしょう。
したがって、TIAを発症し、たとえ症状がすぐに回復しても軽視すべきではありません。
TIAが疑われた場合は、直ちに医療機関を受診し、脳血管の評価や心臓の検査、血栓予防の治療が必要になります。
熱中症や低血糖との症状の類似性と識別方法
この記事では、熱中症や低血糖との症状の類似性と識別方法について解説します。
熱中症と低血糖はいずれも脳卒中と類似した症状を示すことがあり、正確な識別が重要です。
熱中症では、高温多湿環境下での体温調節障害により、意識障害、ふらつき、頭痛、嘔気、脱力感などが現れます。
重症例では、痙攣や昏睡に至ることもあります。
一方、低血糖は、脳のエネルギー源であるブドウ糖が不足することで、意識の混濁、けいれん、発汗、動悸、めまい、異常行動などの症状が出現します。
脳卒中の片麻痺や構音障害と区別がつきにくいこともあります。
両疾患とも、脱力感や意識障害を呈する点で脳卒中との鑑別が難しい場面がありますが、鍵となるのは、発症状況、既往歴、バイタルサインの把握です。
たとえば、高温多湿下での発症や屋外作業中であれば熱中症の可能性が高く、糖尿病の治療中で空腹時に症状が出現した場合は低血糖が疑われます。
また、熱中症では体温上昇や発汗の異常、皮膚の乾燥などがみられる一方、低血糖では冷や汗や頻脈、震えなどが顕著です。
これらを踏まえて、迅速な問診、身体所見、適切な検査が、脳卒中の誤診防止につながります。
めまいやふらつきを伴う他の疾患との鑑別ポイント
この記事では、めまいやふらつきを伴う他の疾患との鑑別ポイントについて解説します。
めまいやふらつきは脳卒中の初期症状として現れることがあります。
他にも多くの疾患が類似の症状を起こすため、的確な鑑別が重要です。
まず、末梢性めまいの代表である良性発作性頭位めまい症は、特定の頭位変化により回転性めまいが誘発されることが特徴です。
でも、聴力障害は伴いません。
一方、メニエール病では耳鳴りや難聴を伴う再発性のめまいが起こります。
前庭神経炎では激しい持続性の回転性めまいが突然起こり、頭位による変化は少ないものの、聴覚症状は認めません。
これらの末梢性疾患に対し、中枢性の原因である小脳梗塞や脳幹梗塞では、ふらつきが歩行不能レベルとなる場合が多いです。
加えて、構音障害、複視、四肢の協調運動障害を伴うことがあります。
また、起立性低血圧や不整脈など循環器系の疾患でも、ふらつきやめまいが起きることがあり、立ちくらみや動悸の有無が診断の手がかりとなります。
心因的要因によるめまいでは、非回転性の浮動感が中心で、神経学的異常を欠くことが特徴です。
これらの鑑別には、詳細な問診、発症状況の確認、神経学的検査が不可欠です。
まとめ
今回の記事では、医師が考える誤診を防ぐための脳卒中と似た症状の見分け方について解説しました。
脳卒中は、脳の血管が障害される疾患であり、多くは脳神経の損傷を残します。
そのため、重症の場合は後遺症が残り、日常生活に支障が生じます。
損傷した脳神経を回復すると、後遺症は改善しますが、現在の治療ではなかなか難しいのが現状です。
そのため、新たな治療として再生治療への関心が高まっています。
再生医療の実際例として、「神経障害は治るを当たり前にする取り組み」を、ニューロテック®と定義しています。
また、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』を、リニューロ®と定義しました。
具体的に、リニューロ®とは、同時刺激×神経再生医療Ⓡにて『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』です。
また、その治療効果を高めるために骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリ®の併用をお勧めしています。
ニューロテック、脳梗塞脊髄損傷クリニックなどでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供し、神経障害の軽減を目指しています。
これらの治療は、これまで機能回復が望めなかった疾患を有する患者さんに期待が持てる治療となるでしょう。
よくあるご質問
- 脳卒中の見分け方は?
- まずは、片側の手足の麻痺やしびれ、言葉が出ない、呂律が回らないといった症状の有無を確認することが重要です。
これらは典型的な脳卒中の症状であり、特に発症が急であることが特徴です。
意識障害、視野障害、めまい、歩行困難も注意すべき症状です。
このような症状が見られた場合は、直ちに医療機関を受診しましょう。 - 脳卒中に似た症状が現れるのは何ですか?
- 脳卒中に似た症状が現れる疾患として、てんかん発作、低血糖、脳腫瘍、脱水や感染による意識障害、さらには心因性の機能性神経症状などがあります。
これらは一時的に麻痺、言語障害、意識障害を起こすことがあり、脳卒中との鑑別が必要です。
(1)脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン[2019年版]|日本泌尿器科学会:https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/36_lower-urinary_dysfunction_2019.pdf
(2)脊髄損傷の排便マニュアル|国立障害者リハビリテーションセンター:https://www.rehab.go.jp/application/files/4815/2039/6868/07_29_01_PDF3.7MB.pdf
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脳梗塞は高齢者だけではなく、若い世代でも発症する可能性があります。初期症状として、一時的な手足のしびれや麻痺、言葉が出にくい軽度の失語症、視野の片側が欠ける視覚障害などが挙げられます。これらは脳の異常を示す重要なサインであり、放置すると症状が悪化するリスクがあります。適切な予防と早期対応が、健康を守る鍵となります。
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